ストーリー

一生の仕事。愛する人たち。
そして言葉――大切にする。全力で

写真:辞書編集部の資料室。木箱が並んだ棚の脇に、馬締と上司の荒木。
横並びに3枚の写真:左から順に編集主幹の松本、馬締と先輩の西岡、
馬締の下宿の大家、タケおばあさん。

1995年、玄武書房辞書編集部。
ベテラン編集者・荒木は間もなく定年を迎える。
監修の松本を支えるメンバーはお調子者の編集者・西岡と契約社員の佐々木のみになる。
自分の後継者を見つける決意をするも、社内には辞書編集にむく社員になかなか出会えないでいた。

そんなある日、荒木は営業部内で変人扱いされ、持て余され気味の男性社員・馬締光也と出会う。
大学院では言語学を専攻。
早速、馬締に問いかける、

「”右”という言葉を説明できるかい?」
「西を向いた時、北にあたる方、が右」


とぶつぶつ呟きながら、おもむろに自分の机の辞書を引きはじめるのだった…。
明らかに怪しい…でも見つかった、新しい辞書編集部員が!!


写真:辞書編集部の集合写真。自分の席に座る編集主幹の松本。
その後ろに、先輩の西岡、馬締、上司の荒木、契約社員の佐々木が並ぶ。

馬締を迎えた辞書編集部は、新しい辞書「大渡海」の編纂に取り組んでいた。
見出し語約24万語、編集方針は、新しい概念や言葉も積極的に掲載し、今までにない“今を生きている人たちに向けた辞書”を目指すこと。


「言葉の海。人は辞書と言う舟でその海を渡り、自分の気持ちを的確に表す言葉を探します。
誰かと繋がりたくて広大な海を渡ろうとする人たちに捧げる辞書、それが大渡海」

松本の言葉に感銘を受け、馬締は一気に辞書編集の世界にのめり込む。


写真:馬締の部屋。馬締が本に埋もれるように眠っている。

用例採集、見出し語選定、語釈執筆、レイアウト、校正…
優に15年はかかる辞書作りは、地道な作業の連続。
新しい言葉集めに余念がない松本の情熱。
いつもちょっかいを出してくる西岡の明るさ。
佐々木の寡黙な優しさ。
そして荒木から受け継いだ袖カバーの重み。
編集部の皆を尊敬する一方で、うまく自分の気持ちを伝えられず、また皆の気持ちもわからないことを悩む馬締。


写真:馬締の部屋。大家のタケおばあさんが馬締に煮物の入った雪平鍋を差し出す。

そんな馬締に下宿先「早雲荘」の大家・タケは

「他人の気持ちがわからないなんて当り前じゃないか。
辞書作りってのは言葉の仕事じゃないの?
だったら言葉を使って、喋んなきゃ」

タケの言葉に、馬締は深くうなずくのだった。


横並びに3枚の写真。左から順に、香具矢に白い封筒を渡す馬締、白い封筒を手にした香具矢、板前服姿の香具矢。

ある満月の夜、馬締が早雲荘の二階の物干し場に行くと、見知らぬ女性が飼い猫トラを抱いて立っていた。
彼女の名前は林 香具矢。
大家のタケと同居することになった孫娘で、板前修業中。
運命の出会い、そして突然の恋のはじまりに仕事が手に着かない馬締。

編集部員たちはその恋を応援し、ラブレターを書くことをすすめる。
しかし、言葉のプロでありながら、馬締は香具矢に思いを伝えるにふさわしい言葉をみつけることができないでいた。
そんななか、西岡のPHSに不穏な噂が舞い込む。
「大渡海、中止になるかもしれないです」

果たして「大渡海」は完成するのか?
そして、馬締の思いは伝わるのだろうか!?

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